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東京高等裁判所 平成11年(行コ)178号 判決 2000年5月11日

主文

一  本件控訴をいずれも棄却する。

二  控訴費用は、控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一申立て

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人らの請求を棄却する。

3  訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人らの負担とする。

二  被控訴人ら

控訴棄却

第二事案の概要

事案の概要は、次のとおり訂正するほかは、原判決の「事実及び理由」第二に記載のとおりであるから、これを引用する。

一  原判決七頁三行目の「満たない」から「課する」までを「満たない場合には」に改める。

二  原判決一六頁末行の「本件」から同一七頁末行の末尾までを次のとおり改める。

「 本件売却土地を含む本件各土地は、文化財保護法五七条の二に規定する「周知の埋蔵文化財包蔵地」である「片山遺跡」内に所在していたため、本件売却土地の買主である丸紅は、平成六年九月九日、中野区教育委員会に対し、右土地内の埋蔵文化財の有無について照会をしたところ、同教育委員会は、右土地内に遺構が存在することが確実であり、発掘調査が必要である旨の回答をした。その後、同教育委員会から、丸紅に対し、発掘調査及び遺物整理報告書刊行費用として二九六〇万円程度が必要であること、調査期間は四か月程度を要することが伝えられ、これを受けた丸紅と被控訴人らは、協議の上、同教育委員会に対し、丸紅によるマンション建築計画(平成七年四月一日着工予定)は予定どおりとしたいので、発掘調査は平成六年一二月一日に開始して欲しい旨申し入れ、同教育委員会も了承した。以上の経緯を経て、被控訴人Aと丸紅は、平成六年九月二七日、文化財保護法五七条の二第一項に基づく「発掘」(その期間は、平成七年四月一日から平成八年二月末日まで)の届出をし、同届出は、中野区教育委員会、東京都教育委員会を経由して文化庁長官に進達された。そして、被控訴人A及び丸紅は、平成六年一一月一一日、中野区片山遺跡調査会に本件各土地についての発掘調査(本調査)(以下「本件発掘調査」という。)を委託し、同調査会は、同年一一月二六日付けで文化財保護法五七条一項所定の「発掘調査」の届出をした上、同年一二月一日から平成七年三月三一日までの間発掘調査を実施し、縄文時代の遺構や先土器時代の遺物等を発見し、これらの調査結果は、平成七年七月、「中野区片山遺跡第二次発掘調査報告書」としてまとめられた(甲六、七の一及び二、九、乙二、三、五の一及び二、一〇、一二)。」

三  原判決二一頁初行の冒頭から同二七頁五行目の末尾までを次のとおり改める。

「1 被控訴人らの主張

(一)  規則三五条二項二号該当性に関する主張

前提事実に記載のとおり、被控訴人らは、本件土地が「周知の埋蔵文化財包蔵地」である片山遺跡内に所在していたところから、中野区教育委員会等の要求で、埋蔵文化財の発掘調査(本件発掘調査)を実施することとなり、そのために、平成六年一〇月末ころに駐車場としての利用を終了することを余儀なくされた結果、平成七年度分の特別土地保有税の免除を受けられなくなったものであり、右事情は、規則三五条二項二号所定の特別土地保有税減免事由に該当する。

なお、被控訴人らは、文化財保護法五七条の二第一項の「発掘」の届出をしているが、この点は、規則三五条二項二号該当性を否定するものではない。すなわち、同号は、「文化財保護法五七条一項に規定する埋蔵文化財を包蔵する土地で、当該埋蔵文化財を包蔵していることにより」特別土地保有税の納税義務が免除される土地であることの認定等(以下「免除認定等」という。)を受けられなかった場合に同税の減免を行うことができる旨定めているところ、右規定は、埋蔵文化財を包蔵しているために行われた発掘調査によって免除認定等が受けられなくなった場合には、その発掘調査が、文化財保護法五七条一項の届出に基づくものであるか、同法五七条の二第一項の届出に基づくものであるかを区別することなく、同税の減免を行うことを定めたものと解すべきである。また、仮に、規則三五条二項二号の規定が文化財保護法五七条一項所定の「発掘調査」が行われた場合を念頭に置いた規定であるとしても、本件発掘調査は、実質的には同項所定の「発掘調査」と同様の公益的意義(文化財保護行政上の意義)を有するものであり、中野区教育委員会、東京都教育委員会の指導に従って行われたものなのであるから、その届出が文化財保護法五七条の二第一項に基づいて行われたとしても、実質的には同法五七条一項所定の「発掘調査」が行われたものとして規則三五条二項二号に該当するものと解すべきである。

(二)  規則三五条二項三号該当性に関する主張

仮に、規則三五条二項二号該当性が認められないとしても、被控訴人らは、東京都が優良な住宅と認めるマンションの建築のために本件売却土地を丸紅に譲渡し、かつ、右売却に伴い、中野区教育委員会の要請に基づいて、約三〇〇〇万円もの費用を投じて埋蔵文化財の発掘調査という文化財保護上意義のある行為を行った結果、免除認定等を受けられなくなったのであり、このように土地行政、文化財保護行政に協力した者が、その協力のために特別土地保有税の免除を受けられなくなるのは不当である。したがって、右のような事情は、規則三五条二項三号の減免事由である「特別な事情」に当たるものと解すべきである。

2 控訴人の主張

(一)  規則三五条二項二号該当性に関する主張

本件においては、規則三五条二項二号該当性は認められない。その理由は、次のとおりである。

(1) 規則三五条二項二号は、「文化財保護法五七条一項に規定する埋蔵文化財を包蔵する土地で、当該埋蔵文化財を包蔵していることにより」免除認定等を受けられなかった場合に、特別土地保有税を減免する旨を規定しており、あえて「文化財保護法五七条一項に規定する埋蔵文化財」との文言を用いていることからすれば、同規定は、その文言上明らかに、文化財保護法五七条一項所定の「発掘調査」が行われた場合を対象としているものである。しかしながら、本件発掘調査は文化財保護法五七条の二第一項の届出に基づいて行われているのであるから、規則の右規定に文言上該当しない。

(2) 規則三五条二項二号が、文化財保護法五七条一項所定の「発掘調査」が行われた場合を対象としていることは、条文解釈の点からも明らかである。すなわち、文化財保護法五七条一項所定の「発掘調査」は、埋蔵文化財の調査確認等、文化財保護上の意義を有する行為であるのに対し、同法五七条の二第一項所定の「発掘」は、土木工事一般を指すものであって、それ自体としては文化財保護上の意義を有するものではない。そして、規則三五条二項二号は、「公益のため直接専用する土地その他の土地で規則で定めるもの」について特別土地保有税の減免を行う旨の条例一五四条一項二号の規定を受けて規定されたものであって、公益的意義を有する行為によって免除認定等を受けられなかった場合に特別土地保有税の減免を行う旨を定めていることが明らかである。したがって、規則の右規定は、公益的意義を有する行為が行われた場合、すなわち、文化財保護法五七条一項所定の「発掘調査」が行われた場合を指すものと解すべきである。

(3) 本件発掘調査は、文化財保護 法五七条の二第一項の届出に基づいて、マンション建築のための土木工事の一環として行われたものであるところ、右工事の主体は丸紅であって被控訴人らではない。そうすると、被控訴人らは、右届出に係る届出書に記名押印をしてはいるものの、法律上は届出義務者にも当たらないことになるのであるから、文化財保護法五七条の二第一項所定の「発掘」をしたともいえないことになる。したがって、仮に、規則三五条二項二号が、文化財保護法五七条の二第一項所定の「発掘」をした場合にも適用されるとしても、被控訴人らについては右規則の規定は適用にならない。

(4) 「文化財保護法五七条一項に規定する埋蔵文化財を包蔵する土地で、当該埋蔵文化財を包蔵していることにより」免除認定等を受けられなかったといえるためには、右事情がなければ免除認定等を受けられたことが必要であり、本件においては、本件各土地が、平成七年度において駐車場用地として特別土地保有税の納税義務が免除されたはずであるといえることが必要である。ところで、地方税法施行令五四条の四第二項は、納税義務免除の対象となる土地の利用方法が、「相当の期間にわたると認められる」ことを要すると定めているところ、本件各土地については、その大部分が平成七年四月一二日に丸紅に譲渡されているのであるから、被控訴人らとしては、仮に、本件発掘調査が行われなかったとしても、丸紅に対する土地引渡義務を履行するため、平成七年の早い時期に駐車場としての利用を終了させる必要に迫られていたことになる。したがって、本件各土地は、平成七年度において「相当期間」駐車場として利用されることはなかったものであるから、減免事由は存しない。

(二)  規則三五条二項三号該当性に関する主張

規則三五条二項三号の「特別の事情があると認められる土地」とは、その土地の所有者の責に帰することのできない事情により行政庁の開発許可、建築確認等の手続に相当の日数を要したため、基準日までに建設等に着手することができず免除対象土地として認定されなかった土地をいい、このような土地についても、開発許可、建築確認等の手続の完了後速やかに建設等に着手された場合においては、当該土地が恒久的な建物、施設等の用に供されることが確実であると認められる時点において当該土地に係るこの間の特別土地保有税が減免されるものであるところ、被控訴人らは、単に、本件土地を丸紅にマンション建築用地として売却する必要から本件発掘調査を行ったものであり、その発掘調査に相当の日数を要したため土地の引渡しができなかったのにすぎず、また、丸紅に対して土地を譲渡することにより、自ら本件土地を利用する意思を有しなくなったものであるから、前記の要件に該当しないことは明らかである。したがって、本件について規則三五条二項三号該当の事由も認められない。」

第三当裁判所の判断

一  当裁判所も、被控訴人らの請求は、いずれも認容すべきものであると判断する。その理由は、次のとおり付加、訂正するほかは、原判決の「事実及び理由」第三に記載のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決二七頁八行目の「一一、」の次に「一二、」を、同二八頁末行の「発掘の実施」の次に「(その期間は平成七年四月一日から平成八年二月末日まで)」を、同二九頁二行目の末尾に「右委託を受けた中野区片山遺跡調査会は、同月二六日、同調査会会長名義で文化財保護法五七条一項所定の「発掘調査」の届出をし、右発掘届は、中野区教育委員会を通じて文化庁長官に進達された。」を各加え、同三〇頁六行目の「及んだ」を「及び、その成果は、平成七年一〇月、「中野区片山遺跡第二次発掘調査報告書」としてまとめられ、刊行された。」に改める。

2  原判決三一頁末行の冒頭から同三九頁一〇行目の末尾までを次のとおり改める。

「1 規則三五条二項二号(以下、「規則二号」又は「規則二号の規定」という。)の解釈について

条例一五四条一項二号は、「公益のため直接専用する土地その他の土地で東京都都税条例施行規則で定めるもの」について特別土地保有税の減免を行う旨を定めているが、右規定の趣旨は、公益上の必要から、特別土地保有税の免除認定等を受け得る利用行為を行うことができない土地について、同税の減免を認めることとし、その例として「公益のため直接専用する土地」を掲げた上で、その他の具体的定めを規則に委ねたものと解される。そして、規則二号は、右条例の定めを受けて、「文化財保護法五七条一項に規定する埋蔵文化財を包蔵する土地で、当該埋蔵文化財を包蔵していることにより」免除認定等を受けられなかった場合に、特別土地保有税を減免する旨を規定したものであり、右条例の規定の趣旨を考えれば、「文化財保護法五七条一項に規定する埋蔵文化財(土地に埋蔵されている文化財)を包蔵していること」が原因となって、文化財保護上の必要から土地の利用が制約されたり、あるいは、文化財保護上有意義な行為を行うために土地の利用が制約された結果、特別土地保有税の免除認定等を受け得る利用行為を行うことができなかった土地について同税の減免を行う旨を定めたものというべきである。

ところで、文化財保護法五七条一項の「発掘調査」は、埋蔵文化財の調査のために土地の発掘を行うものであって、文化財保護上有意義な行為といえるから、同項の「発掘調査」のために特別土地保有税の免除認定等を受け得る利用行為を行うことができなかった土地については、規則二号の減免事由に当たることは明らかである。これに対し、同法五七条の二第一項の「発掘」は、「土木工事その他埋蔵文化財の調査以外の目的」で土地を発掘するものであって、発掘目的自体に文化財保護上の意義が存せず、同法五七条一項の「発掘調査」と同等の文化財保護上の意義を有するものとは言い難いから、同法五七条の二第一項の「発掘」のために免除認定等を受け得る利用行為を行うことができなかった土地については、一般的には、規則二号の規定が適用されないと解される。

しかしながら、①規則二号の規定の内容は前示のとおりであって、文化財保護法五七条一項の「発掘調査」が行われた場合にのみ特別土地保有税の減免を行う旨を明示的に規定しているわけではなく、また、同項所定の届出がされたことを右減免の要件としているものでもないこと、②文化財保護法五七条の二第一項の「発掘」の場合であっても、埋蔵文化財の保護上特に必要があると認めるときは、文化庁長官が発掘に関し必要な指示を行うことができる旨が定められており(同条二項)、右発掘に対しても、文化財保護上の配慮に基づく規制が行われる余地が残されていること等の事情に照らしてみれば、実際に行われた発掘行為が、埋蔵文化財の調査等文化財保護上有意義な行為と評価することができ、実態として、文化財保護法五七条一項所定の「発掘調査」と同視し得る公益性が認められる場合には、規則二号の減免事由に該当するものと解される。

この点につき、控訴人は、「規則二号が「文化財保護法五七条一項に規定する埋蔵文化財」との文言を用いているのは、同項所定の「発掘調査」が行われた場合にのみ規則二号の規定が適用されることを定めたものである」という趣旨の主張をするが、「文化財保護法五七条一項に規定する埋蔵文化財」との文言は、「埋蔵文化財」の定義は文化財保護法五七条一項の括弧書きに規定するものによることを定めたものにすぎないというべきであり、控訴人の右主張は失当である。

2  そこで、右の観点から、本件において規則二号該当性が認められるかどうかを判断する。

(一) 前示認定の事実によれば、①丸紅の担当者が、マンション建築工事を行う前提として、中野区教育委員会に対し、本件各土地内における埋蔵文化財の有無を照会したところ、同教育委員会は、右土地が「片山遺跡」内に存するところから、遺構の存在が確実であり、埋蔵文化財の発掘調査の必要があると回答し、②これがきっかけとなって、同教育委員会と丸紅及び被控訴人Aとの間で協議が進められた結果、発掘調査の内容、期間等が定められ、③被控訴人A及び丸紅は、文化庁長官に対し、期間を平成七年四月一日から平成八年二月末日とする文化財保護法五七条の二第一項所定の「発掘」の届出をするとともに、中野区片山遺跡調査会に本件土地の発掘調査を委託し、④同調査会長は、文化財保護法五七条一項所定の「発掘調査」の届出をした上で、本件発掘調査を行い、その成果が「中野区片山遺跡第二次発掘調査報告書」としてとりまとめられたものである。

以上の経緯に照らしてみると、被控訴人A及び丸紅が行った文化財保護法五七条の二第一項所定の「発掘」の届出は、その期間が平成七年四月一日からとされていることからも明らかなとおり、丸紅が行うマンション建築工事のための土木工事を対象としたものであるが、他方、本件発掘調査は、右届出に至るまでの事前調整の中で、中野区教育委員会から、右マンション建築工事に着手する前に、「片山遺跡」の遺構の調査を行うよう要請され、被控訴人Aらがこれに応じて、これを中野区片山遺跡調査会に委託し、同調査会会長が文化財保護法五七条一項所定の「発掘調査」の届出をした上で実施されたものであり、したがって、本件発掘調査は、右マンション建築工事をきっかけとして行われたものであるとはいえ、その実態は、文化財保護法五七条一項所定の学術目的のための「発掘調査」としてなされたものというべきである。このことは、中野区片山遺跡調査会会長から文化財保護法五七条一項所定の「発掘調査」の届出がされていることからも明らかである。

以上によれば、本件発掘調査は、埋蔵文化財の調査という文化財保護上有意義な目的のために行われたものであって、実態として、同法五七条一項の「発掘調査」と同視できるから、これによって、被控訴人らが免除認定等を受けられるような土地利用行為を行うことができなかったといえる場合には、規則二号の規定が適用されるものというべきである。

控訴人は、「マンション建築工事の主体は丸紅であって被控訴人らではないから、被控訴人らは文化財保護法五七条の二第一項所定の「発掘」の届出の主体とはなり得ず、したがって、規則二号該当性は認められない」という趣旨の主張をしているが、右主張は、本件発掘調査を単なるマンション建築工事のためのものとする点において前提を誤っており、失当である。また、仮に、右主張を、「本件発掘調査の主体は中野区片山遺跡調査会であって被控訴人らではないから、規則二号は適用されない」という趣旨に解したとしても、前示の規則二号の規定内容からすれば、自ら「発掘調査」を行った場合にのみ同号の規定が適用されると解すべき理由はなく、また、仮に、そのような解釈が可能であるとしても、本件においては、被控訴人Aと丸紅が中野区片山遺跡調査会に埋蔵文化財の調査を委託し、その費用も負担しているのであるから、自ら埋蔵文化財の「発掘調査」を実施したものと評価することが可能であるから、いずれにせよ右主張は失当である。他に前記判断を左右するに足りる事情を見出すことはできない。

(二) 第一項の認定事実及び証拠(乙一二、被控訴人A本人尋問の結果)によれば、①被控訴人らは、本件各土地において駐車場を経営し、平成六年度においては、特別土地保有税の免除認定を受けていたものであり、丸紅に対する土地引渡期限までの間は、右駐車場経営を継続することに特段の支障は存しなかったこと、②中野区教育委員会の要請に基づいて本件発掘調査が行われることとなり、平成七年四月一日からマンション建築工事を開始したいという丸紅の意向と、本件発掘調査には四か月を要するという中野区教育委員会の意向を受けて調整が行われた結果、本件発掘調査を平成六年一二月一日から平成七年三月三一日までの間行うことが決定されたこと、③中野区教育委員会は、被控訴人らに対し、平成六年一二月一日から発掘調査を行うためには、同年一一月中旬には現地プレハブ事務所を設置し、下準備に入る必要があるので、それまでに既存建物の除去と駐車場の車両撤去を完了して欲しいと申し入れたこと、④そのため、被控訴人らは、同年一〇月末日ころまでに本件各土地における駐車場経営を終了させたことが認められ、以上によれば、本件発掘調査が行われなければ、被控訴人らは、平成七年二月末か三月中旬ころまでの間は本件各土地において、駐車場経営を継続することができたものということができる。したがって、本件各土地については、本件発掘調査という文化財保護上有意義な行為を行うために、平成七年一月一日の時点において駐車場経営を行うことができず、その結果、特別土地保有税の免除認定を受けることができなかったものであるから、右事情は、規則二号の規定に該当するものというべきである。

控訴人は、「本件各土地は、丸紅に引き渡されることになっていたのであるから、平成七年中の「相当の期間にわたって」駐車場経営が行われることが予定されていたとはいえず(地方税法施行令五四条の四第二項参照)、したがって、平成七年度の特別土地保有税の免除認定を受ける余地はなかった」という趣旨の主張をしている。しかしながら、前示のとおり、本件発掘調査がなければ、被控訴人らは平成七年の二月末か三月中旬ころまでの二か月以上にわたり駐車場経営を行うことができたものであり、しかも、右駐車場経営は、既に数年間にわたって行われてきた事業の継続であって、平成六年度においては特別土地保有税の免除認定がされていたことからすれば、右の程度の期間駐車場としての利用が行われる可能性があれば、「相当の期間」にわたって駐車場経営が行われるものとみなすことができるというべきであるから、右主張は失当である。また、控訴人は、規則三五条二項三号に該当しない理由として、「本件発掘調査の調査期間は、丸紅や被控訴人らが任意に定めたものであるから、本件発掘調査が原因となって平成七年一月一日時点において駐車場経営ができなくなったものということはできない」という趣旨の主張をしており、右主張は、規則二号該当性の判断に当たっても問題となり得るものであるが、本件発掘調査の日程は、平成七年四月一日からマンション建築工事に着手したいという丸紅の意向と、発掘調査には四か月を要するとの中野区教育委員会の意向を調整した上で定められたものであって、容易に変更することができたものとは認め難いから、被控訴人らが、他の期間を容易に選択できたにもかかわらず、あえて平成七年一月一日の時点において本件各土地を駐車場用地として利用できないような発掘調査日程を選択したものとはいえず、右主張も失当というべきである。

他に前示判断を左右するに足りる事情は存しない。

3  以上によれば、本件各土地については、規則二号に該当する事由が存するものというべきであるから、同号該当性を認めず、被控訴人らによる特別土地保有税の減免申請を不許可とした本件各処分は、その余の主張事実について判断するまでもなく、違法として取消しを免れない。」

二  以上の次第で、原判決は相当であり、本件控訴はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法六七条一項、六一条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 筧康生 裁判官 滿田忠彦 裁判官 鶴岡稔彦)

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